2006-01-01から1年間の記事一覧

飛び込むも飛び乗るも良しホームにて「間もなく来ます」の表示点灯 菊池孝彦 蟻を殺しなめくぢを殺し自らを幾分の一か殺しけり今朝 酒井佑子 今ははやひすがら微睡む老い人の脳裡にうねるか麦秋の野は 望月さち美 ひもすがらよもすがら降る梅雨の雨わが残年…

◆「太陽の方向」天野慶 隕石にぶつかるほどの確率のはずの事件が毎朝届く 「白亜紀の掟」について語られて眠くならないほど愛がある ◆「赤信号青信号」生野檀 雷鳴の合間をぬって豆腐屋が豆腐を売りにぴいぷうと来る 死後のはた未生の闇に還るべく最終電車が…

かにかくに 伊波虎英 くぐもれる遠雷(とほいかづち)に急かされてポケットティッシュを配る人見ゆ 死のきはの蘆花と蘇峰の長月をおもふ民団と総連の和解に 「セイロガン糖衣A」と「正露丸」の差異かもしれぬ詰るところは かにかくに蟹、覚醒剤をはこび入れ…

しろがねの輪が光りゐし無名指を「アダムの肋」と呼びし人妻 【扇マーク】(コーチとやりとり) といふメール牽牛花が蔓伸ばすごと来る

テポドンとふ土地の名哀しファン・シネとふ韓国女優のなまへは哀し (☆7/26付「さるさる日記」参照)

天上天下唯我独創新庄剛志(SHINJO)のパフォーマンスに球場は沸く (☆7/25付「さるさる日記」参照)

◆受賞作 「分身」滝田恵水 始業ベル鳴りて生まれる分身はいつも尖った視線を放つ 金属に眠る神様起こすためワイヤーブラシ新しくする 居場所なきほこりは空に導かれひかりの神が歩きはじめる 長靴をはいて走ればとりあえずガンバッテイル記号となりぬ 形容詞…

お互いに食むために生れし生命に満ちて春ある国は美し 武田正史 百円のパンツとシャツを買ひて着る気楽な体ふはふは歩く 菊地威郎 弁当のおかずのごとく間仕切られ焼肉店に集ひしわれら 泉山和美 うつむきて浜辺を歩む若者は立ち止りざまに海背負ひけり 森脇…

風の温度上がりてたたむショールにはヘロンの公式隠れていたり 滝田恵水 運不運ひとにあるとも水仙の花の向こうの空は果てなし 阿部美佳 筆をもつ指先さびし二月尽くり返し書く春の一字を 小林登美子 その笑顔は仮面に似ると思いつつ鏡のような友を離れる 東…

鳥あまた死にける春の街中にここより始まる犯人探し 大場恭子 イレウスとふひびきは異国の神の名のごとし青年医師の言ふとき 下村由美子 五年前に憎みし女の唇のかたちにも似て鬱金香(チューリップ)咲く 有沢螢 遺失物と称(よ)ばれゐたればこんなにもし…

ブルカ脱ぎしをとめのごとくかがやけり根雪きえたる越の山々 金沢早苗 ひとり居が二人居となりシーア派とスンニ派ならねただごとならず 木崎洋子 いく人もひと入るる花のかまくらに心はなちて花の気もらふ 寺島弘子 うるみゐる水晶盤をあふぎつつ桜のしたは…

「君が代」の低く漏れくる学校ゆ母川回帰の鮭の屍臭す 糠星がふたりの顔を仄照らしイエスとユダの密談つづく わが歌に言霊ありや文字霊のありや泉鏡花(きやうくわ)の総ルビが沁む 曾祖父が神風特攻隊員でありし女中(メイド)もカフェにをるらむ 塞舌耳(…

ビールでも発泡酒でもなきサッポロの 雑酒 > の☆を愛しむ うとうととすればアコムのCMの悪夢となりてやがてアリコへ 「人は目に見えないものを見てしまふ」笑みつつ手品師トランプを繰る 伊波虎英

とりあへずひとつこなして日常をほどけば釣りあふわが弥次郎兵衛 水原茜 人の為すことは偽り 春たけて人さはにみつ蘭の花展 松野欣幸 家なかに四月一日ひとりゐて嘘ひとつつけぬ愚か者なり 村田耕司 古き地図にメリヤス工場と記されて河畔のホームセンター栄…

「お母さん」母に呼ばれて振り向けば照れくさそうに笑う母あり 立花鏡子 こんなふうに聞くと良かつた母の愚痴シンクの水滴吸ひゆく布巾 上杉諒子 現在(いま)のわれと同じ空気を吸いたまえ 古きクッキーの缶開く四月 蜂須賀裕子 殺されたニュースの数だけ減…

臑囓りをいまはニーチェといふらしい祖母のききかじり美(は)しきままとせり 高澤志帆 みづうみのおもてに散り敷く花を踏みイエス日本の春を訪ふ 西橋美保 「深き河借りてゆくよ」と少年はわが書棚より一冊を抜く 山中重子 朝(あした)からウルトラマンで…

さくら花堤にあふれ咲く午後の犬の歩みはわが影に添ふ 春畑茜 大地に向うスペルマなるや降り止まぬさくらさくらを孕ましてゆく 足立尚計 「散るさくら残るさくらも散るさくら」余命知らざる人らが集う 野地千鶴 花みちて仄かにくらききざはしを黙しつつ行く…

「春のノブ」洞口千恵 水縹(みはなだ)の紗のひろごれる天空の奥処に春のノブは光れり まぼろしの雪山(せつさん)童子去りゆきて春の吹雪はたちまちに止む 瀬戸内の能島(のしま)来島(くるしま)因島訪ひたし海彦にいざなはれ 「名告らさね」平居久仁子 …

凄惨な事件つづけば「NHKのど自慢」の鐘みだれ打ちなり 何処(いづこ)かにイナバウアーの姿して天を仰げる磔刑像あらむ 主催国国歌ながれて米軍の基地もつ日韓三たび戦ふ (World Baseball Classic) 鼻(はな)つ柱(ぱし)強きイチローの面立ちに小泉…

「見上げても星はみえない」(上体を反らさなくてもイナバウアー) 伊波虎英

☆永田和宏・選(第一席)ああ異所性蒙古斑のごとき岩礁の独島(トクト)と呼ばれ竹島と呼ばる 伊波虎英

春の陽を背にのせきたる白き猫われのかたへに濃き影をおく 森脇せい子 夕暮れのわたしはどんなに畳みても元に戻らぬ朝刊のよう 高木律子 愛されしヨハネを思えば動脈は歇(や)むなくめぐる紫色に 塩野朱夏 「バス」を「馬車」と聞き違へたる電話口 朋の遠方…

双眼鏡に青きハヤブサ入りきて喜ぶ空はあたらしきかな 久保寛容 降る雪の音は聞えず聞えねばひとりの音に林檎嚙みをり 中島敦子 屋根の上(へ)に象が何頭いるだろう降り積りたる雪の重さよ 中川厚子 スノーボードの裏に描かれしサイケ模様色の楽しも宙に浮…

君に書く手紙の余白 水鳥の帰る空へと繋がっており 守谷茂泰 死にし王の王冠のごと冬の木の高き処に巣は残りをり 西橋美保 広重描く雨の庄野を駕籠急ぐしぶく雨音確かに聞こゆ 井上時夫 みづかさの増えゆく川にほそき橋むかうへの道しろく示せり 花笠海月 遮…

危うさのシンボルとして夕暮れのアルタ・ビジョンは点滅したり 藤原龍一郎 水紋の生(あ)れては消ゆる夕ごころ春いち日を臥すにも倦みて 春畑茜 ミシシッピーアカミミガメはミドリガメ 泣くわたくしにテレビは言ひぬ 多田零 くもり硝子拭えど明日は見えませ…

大寒波なるモスクワに路上生活者(ホームレス)と Coca-Cola (コーク)の赤き看板は凍つ 「世界バラ会議大阪大会」は百一日後より七日間のみ 六本木ヒルズ族のひとり森小路(もりせうぢ)ならぬ袋小路(ふくろこうぢ)に見えなくなりぬ なぐれ魚売らるるご…

【扇マーク】 「春先は市街戦に注意して」色白き気象予報士が告ぐ 伊波虎英

かたちよく盛られし飯粒(いひぼ)妖変し桜はなびら仏間をおほふ *題「桜(花)」 *期間2006.3.27〜4.15 *出詠歌一覧は、こちら。↓ http://www.tanka.org/kakai15.html

スズメ、ハト、カラス大量死の春を花びらとなり散るやもホモ・ファーベル(われら) (☆4/14付「さるさる日記」参照)

「出かけます」一行ありてメモ用紙みかん一個の文鎮匂ふ 河内尚 束縛と自由のあはひふんはりと加湿器の湯気ふたりをつつむ 谷垣恵美子 海鳴りのきこえ来るよな寂しさを子の置きゆきし大人のぬりえ 山粼カツ子 とろろこんぶうどんをかるく啜るときも過ること…